岸本葉子「がんからはじまる」

最近闘病記関係の本やブログを読むことが多い。この方の著書を記事にあげるのは2回目。
私は、「がんと心」の方を先に読んだけれど、著者ががん(虫垂がん、StageⅢ)を
公表した最初の本はこちらである。

含まれている内容は、がんの発見、診断から、退院後1年ほど経ち、
がん患者のサポートグループ「ジャパン・ウェルネス」に参加するところまでの、
経緯と著者の思考。

内容は2部構成となっており、第1部ががん発見~退院まで、第2部が退院後。
「がんと心」が、術後3年が経過し、比較的客観視したような書きぶりだったのに対し、
こちらの方は、実際は術後1年以上経って書いたものではあるのだが、
がんの診断、入院、手術、退院という出来事に対し、
オンタイムでの感じ方、考え方が書かれている。
告知を受けたときの心理、手術を控えてのこと、手術が終わってから、再発の不安に揺れる心。
非常にまじめに、深く思考を巡らせているところもあれば、いつもの岸本さん風の、
ちょっと軽快な書きぶりのところもあり、内容が重い割には読みやすかった。若くして(40歳)がんにかかったことにより、直面する仕事のこと、親への告知のこと。
境遇は異なるけれど、1年前、同じようなことを感じ、考え、対処していたなあ・・・
と自分たちのたどってきている経過と重ね合わせる部分も多かった。

がんにかかっても、それまでと全く異なる人生になるのではなく、
自分が自分であるための一筋の線を守りたい、人生の主体でありたい、という思い、
それと裏腹に、「死と隣り合わせの虚無感」とともに、波のように揺れ動く心。
私はがん患者本人ではないので、「共感する」などと言うのはおこがましいのかもしれないが、
ああ、わかるわかる、その気持ち、と思いつつ読み進んだ。
自分が当時感じたことを、私はうまく言葉にできない部分が多かったけれど、
さすが文筆業を生業にしている方は、文章がうまい。思索的で興味深い本だった。

岸本さんががんと診断されたのは2001年10月。もうじき治癒の目安となる5年が経つ。
再発せず5年経過する率(通常は5年生存率だと思うが、本の中では「再発せず5年」、
という表現を使用していた)が30%だったとのこと。
本の中に、「治癒の目安となる、5年後が、自分にくるかどうかわからない」と書かれていた。
それは誰もわからなかったことだと思うが、どうやら、無事に迎えられそうですね。
講演をされたり、雑誌に連載を書かれていたりすることから察するに、
おそらくお元気でいるのだろう。お元気で活躍されていることを心からお祝いします。

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